近年、失った歯を補う手段として広く知られるようになった「インプラント」。
しかし、インプラントがどのような治療法か、具体的な内容を知らない方も多いのではないでしょうか。
今回はインプラントの治療内容や、入れ歯・ブリッジとの違いなどを解説します。
インプラントとは
インプラントとは、体の中に埋め込む医療器具の総称です。
心臓のペースメーカーや、美容整形で体に埋め込むシリコンなどもインプラントに当てはまりますが、一般的には歯科インプラントを指す場合が多いです。
歯科領域では、歯が失われた部分の骨に金属製のパーツを埋め込み、そこに義歯を取り付けて歯を再建します。
インプラントに使用するパーツ
【歯科インプラントに用いられる3つのパーツ】
- 歯根部(インプラント体):あごの骨に埋め込むパーツ
- 支台部(アバットメント):歯根部と義歯を連結するパーツ
- 人工歯(上部構造):義歯にあたるパーツ
【各パーツの素材】
- 歯根部(インプラント体):チタン、チタン合金
- 支台部(アバットメント):チタン、チタン合金、ジルコニアなど
- 人工歯(上部構造):レジン、セラミック、ハイブリッドセラミックなど
インプラントには、歯根部と支台部が一体化した「ワンピースタイプ」と、歯根部に支台部をつなげる「ツーピースタイプ」があります。
また、歯根部は大きく分けて、ネジ状の「スクリュータイプ」と、円形状の「シリンダータイプ」の2種類があります。
インプラントの費用
インプラントは基本的に自由診療となるため、全額自己負担となります。
治療にかかる費用の相場はインプラント1本につき30〜40万円程度で、これに初診料や各種検査料、手術費、上部構造の製作費などがかかります。
インプラントができる人・できない人
インプラントは歯周病や事故などの原因で歯が失われた方や、生まれつき歯がない方が受けられる治療です。ただし、以下に該当する方は治療が受けられない場合があります。
- 持病の症状が重い
- 持病で体調が安定しない
- 骨密度が極端に低い
- 骨が極端にやわらかい
- 金属アレルギーがある
なお、インプラントができるのは、あごの成長が止まってからです。そのため、あごの骨が成長過程にある子どもはインプラントができません。
個人差はありますが、一般的に女性は18歳くらい、男性は20歳くらいから治療が受けられます。
インプラント・入れ歯・ブリッジの違い
失った歯を補う手段にはインプラントのほか、入れ歯やブリッジといったものもあります。
入れ歯は人工の歯を用いた、取り外し可能な装置です。失われた歯の部分のみを補う「部分入れ歯」と、歯がまったく残っていない場合に適用される「総入れ歯」の2種類があります。
一方、ブリッジは失われた歯の両隣の歯を支えとして使い、橋(ブリッジ)のようにつなぎ合わせた歯を取り付ける方法です。
ここでは、それぞれの違いを8つの項目別にまとめました。
インプラント | 入れ歯(部分入れ歯) | ブリッジ | |
費用相場 | 30〜40万円 | 5,000〜1万5,000円 | 1万〜2万円 |
治療期間 | 平均3ヶ月〜6ヶ月 | 2週間~1ヶ月程度 | 1~2ヶ月 |
寿命 | 10~15年 | 3~5年 | 7〜8年 |
入れ歯やブリッジは基本的に保険適用となるため、失われた歯を補う際に歯科クリニックで勧められることが多いです。
ただし、入れ歯やブリッジはインプラントに比べて短期間での交換が必要な上、ほかの歯やあごの骨への影響が大きいことがデメリットとして挙げられます。
インプラントのメリット・デメリット
インプラントのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- 見た目がきれい
- 周囲の歯に負担がかからない
- 入れ歯やブリッジに比べて寿命が長い
- 自分の歯(自然歯)と同じように咀嚼できる
- 歯槽骨(歯を支える部分の骨)の吸収を抑制できる
デメリット
- 手術が必要
- 費用が高くなりやすい
- 定期的なメンテナンスが必要
- 入れ歯やブリッジに比べて治療期間が長い
インプラント治療の流れ
歯科クリニックにもよりますが、一般的にインプラント治療は以下の流れで行われます。
- カウンセリング
- 術前検査(CT検査・臨床検査・歯周病検査など)
- 治療計画の立案
- 一次手術(インプラント埋入手術)
- 抜糸・仮歯調整
- 二次手術(アバットメント取付)
- 上部構造の製作・装着
- メンテナンス・定期検査
骨量が十分にあり、かつ骨が硬い場合は、1回の手術でインプラントの埋め込みとアバットメントを行う場合が多いです。
また、治療後はインプラントをしっかりと維持するため、メンテナンスや定期検査を行う必要があります。
とくに治療後1年以内はこまめに歯科クリニックに受診し、3〜6ヶ月に一度は通院しなければいけません。
治療後1年を経過しとくに問題が見られない場合は、その後およそ年に一度のペースでメンテナンスや定期検査を行います。
メリットとデメリットを理解してインプラント治療を検討しよう
インプラントはあごの骨に埋め込んだパーツを土台に、義歯をかぶせる治療法です。
「手術が必要」「費用が高い」などのデメリットはありますが、失われた歯を美しく、自分の歯のように再建できます。
インプラントを検討されている方は、メリットとデメリットをよく理解して治療するか決めましょう。
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